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日本における自然災害の歴史 3

コロナ禍になって以降、毎日、感染者数・死亡者数が報道されています。私たちは、どうしても数値ばかりに目がいきがちですが、その数字一つ一つには、多様なストーリーが含まれています。いつ・どこで感染したのか、どのくらい症状が続いたのか、どのような予防対策を行なったのかーーーそうした経験の蓄積には、後世に生かせる具体的な教訓が詰まっているのです。

最近になって、スペイン風邪の渦中を過ごした京都の女学生の日記が発見されました。そこには、感染症に対する不安や恐怖、身近な親族を亡くした悲しみなどが率直に綴られています。パンデミックの実情を知る上で貴重な資料といえます。

また、志賀直哉の小説「流行感冒」は、スペイン風邪にかかった自身の体験をもとに書かれています。作品中、志賀自身をモチーフにしたとされる主人公は、こっそりと芝居を見に行ったお手伝いさんに対して”自粛警察”のような行動を取ってしまいます。その後、自らがスペイン風邪にかかり、以前の言動を反省し、物語は終わります。危機的状況であっても他者への配慮を失ってはいけないという思いが伝わってきます。

このような個別具体的な「ミクロヒステリー」と、統計データなどから導き出される「マクロヒステリー」を組み合わせることで、感染症という事象を立体的に描き出すことができ、教訓として継承されていくのだと思います。時にSNSが普及した現代にあっては、個人の記録がアーカイブされやすい。誰もが感染症の脅威に立ち向かっているという意味では、私たち一人一人が患者史の”担い手”になり得るわけです。言い換えれば、コロナ禍の中での私たちの経験を生かしていくことが、そのまま未来の安全につながるということになります。パンデミックという人類史に残る期間をリアルタイムで経験しているからこそ、そうした一日一日を大切に生きていきたいと思います。

 

せめぎ合いの時代

歴史をひもとくと、パンデミックの後の社会は、良い方向にも悪い方向にも振れる可能性があります。14世紀にまん延したペスト(黒死病)の後、ヨーロッパでルネサンスが興隆したという例もありますが、それだけで「感染症の後には、社会は良い方向に転換する」と簡単に結論づけるのは難しい。歴史は、さまざまな要素が複雑に絡み合って形成されており、些細な出来事であっても、事態が大きく変ってしまう場合があるからです。その象徴的な例が、スペイン風邪の世界的な大流行によって、終結が早まったとされる第一次世界大戦とその後の状況です。