宗教と食物禁忌 6
スリランカ、タイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどの初期仏教の影響を残す保守的な仏教。今でも出家した僧侶が三種の浄肉を食しています。また10種の不浄肉は禁じられているので、日本では馬肉などをうっかり上座部仏教の僧侶に出さないよう注意が必要です。(在家信徒は特に食規定はなし)。
なおインドの仏教では、肉食を贅沢とみて禁欲する動きや、ヒンズー教社会の影響により、禁忌から出家、在家信徒ともに肉食をしません。
ヒンズー教やジャイナ教、ボン教などとともにインド文化圏で誕生した仏教が、8世紀後半に本格的にチベットに伝わり、その地を中心に発展した仏教の一派。チベット仏教4宗派のうち信者の7割を占めるゲルク派の最高指導者であるダライ・ラマ法王は、観音菩薩の生まれ変わりとされています。密教の教えは現在インド仏教、チベット仏教、日本の真言宗、天台宗に伝えられています。
仏教では人を含む生きとし生ける全ての生き物の命は等しく、輪廻転生の概念からも、かって自分の父母であったかも知れない生き物の命を奪わないよう、菜食が重んじられてきました。しかし、チベットのような自然環境の厳しい土地において菜食で健康を保つことが困難な場合もあり、現代において菜食は、宗教上の行事や特定の期間を除き強制ではありません。現在のダライ・ラマ14世法王猊下も菜食の時期もありましたが、医師のアドバイスで肉食を取り入れておられます。
ボン教(ユンドゥン・ボン)
チベットに古代から伝わる民族宗教。教義はチベット仏教と似ています。
日本における曹洞宗の開祖である道元禅師は、「三徳六味」という食のルールに触れ、三徳(柔らかく口当たりがよい、清潔でさっぱりしている、正しい順序にしたがって丁寧に調理がされている)と、苦、酸、甘、辛、塩辛いの五味に「淡味」(食材そのものの味を大切にする)を加えた六味を大切にすることを説いています。四季折々の商材を使い、食事に変化を加えて他者に喜んでもらうことの大事さにも言及しています。
その他の食規定
仏教における乳製品について
6年間におよぶ苦行で消耗した釈迦の身体を癒やしたのは、スジャータという娘の供した牛乳がゆであったと伝わっています。そのため仏教では牛乳や乳製品に禁忌はありませんが、乳製品は体調のよくない者が栄養を補給するため食べさせるものと解釈され、曹洞宗の精進料理では牛乳や乳製品は使用しないなど、乳製品の扱いは、卵とともに地域や宗派によって扱いが異なります。