経済的視点から見た食品ロス
食品ロスの削減は世界の切実なテーマ
国際連合食料農業機関(FAO)は2019年世界食糧農業白書で、収穫から小売り段階
まで食料生産の14%が失われており、キーメッセージとしてサプライチェーンの各段
階で損失が発生する理由を突き止め、食料品廃棄を削減することが食料安全保障・
栄養・環境の持続性につながる重要な課題と伝えています。
食品ロスと廃棄の定量的な報告書は2011年に翻り、地域や品目別に収穫から外食まで
の段階で北米や欧州では消費段階の食品ロスが多く、コンビナート化が進んでいる
穀物や食肉は製造段階の廃棄が少ない一方、アフリカ等の低所得国では消費時よりも
製造時の損失が多き占めていました。
2016年頃から食品ロス削減が活発化し、フランスでは一定の売上規模の小売業者に
売れ残りを慈善団体に寄付する制度や、イタリアでは売れ残りの寄付によってごみ
処理費用の廃棄税率を軽減する制度が実施されてきました。
飲食店の廃棄予定品をサプライズバスケットで割安販売するスタートアップの実積は
ありますが、世界的にはそのうねりはまだ小さく、SDGS2030年目標の食品ロス大
幅削減のために時限的ステップを策定する企業が増えています。また、今回の公衆
衛生の危機を契機に、グローバルにサプライマネジメントを見直す気運が生まれ、
一つの製品を作るための複数の荷主による物流の無駄をさらに無くすための投資は
緩むことはないと思われます。
食品ロスのブレークスルーは何か?
(ブレークスルーとは困難や障害を突破すること)
日本では一人年間50㎏の食品ロスが減らせていない状況です。飲食店での食べ残しや
家庭の買い過ぎなど、家庭と事業系あわせゴミ処理費用は約2兆円です。
今回、食料輸入国は安全保障のためにも、必需品である食料サイクルのロスを少しで
も減らす必要性を再認識しました。
大量消費社会の捨てる方が安上がりの発想を変えるブレークスルーとなる技術やビジ
ネスモデルに取り組み、次の世代がより良く暮らせる社会を目指す企業は消費者に支
持され、持続的成長が期待できます。
食品産業は鮮度、品質管理やトレーサビリティを自社保証で安心安全にするため、
自社系列重視の固定的なサプライマネジメントが中心でした。
今後は、競争はありながらも系列化から業界共有の標準化で製造や運搬インフラ
方法の見直し、規格外野菜の選果システム、おからや茶殻のような副産物の商品化で
廃棄コストを利益に変える「もったいない」の精神を活かすことが求められます。
未来を志向し、それらを実現する企業の成長チャンスはなくならないと考えます。