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万人の幸福のための経済 2

その中で、昨年実施された、1人当たり一律10万円の「特別定額給付金」は、困窮世帯の家計への効果が大きかったとの研究成果を、早稲田大学のチームが発表しました。月々の資金繰りが逼迫している家庭は、そうでない家庭に比べて、振り込まれた給付金をすばやく引き出し、大部分を日常生活に関わる消費に充てた可能性が高いことが分かったのです。当初、コロナ禍で減収のあった世帯を中心に、30万円の支給が検討されていましたが、給付の迅速性を最優先した「1人あたり10万円」が実現したのです。選別するのに膨大な時間と行政コストのかかる「1世帯当たり30万円」よりも大きな予算をつぎ込んだわけですが、それによってかなった迅速性による利得は、コストを大きく上回ったと評価しています。なにより、セーフティーネットからこぼれ落ちてしまう非正規労働者を支えたことの重要性は、強調してもしすぎることはありません。

 

危機に立ち向かう力は人類の協力と連帯

「自他共の尊厳」の精神が人々を結ぶ

一律給付という社会全体への働きかけは、とりわけ困窮家庭の人々に恩恵を与えることが分かりました。では、弱い立場に置かれた人々を支えることが、社会全体を利するということもまた、言えるのでしょうか。

これを考える上でヒントになるのは、限られた資源を活用して最大の価値を生む「効率性」と、平等性を求める「公平性」という、経済学の教科書でおなじみの主要命題です。経済学では長い間、この二つはトレードオフ(二律背反)の関係であると考えられてきました。どちらか一方を追求するとき、他方は犠牲にならざるを得ないという考え方です。たとえば、困窮する人々への支援は、公平性を重視した施策に当たります。すると、効率性は損なわれてしまうーーー従来の経済学では、そう考えます。しかし近年、そうした単純なトレードオフを新たな視点で捉え直すことが、主流になっているのです。

一例として、ノーベル経済学賞受賞者のエステル・デュフロ氏(米マサチューセッツ工科大学教授)は、教育と健康の増進は、「それ自体に価値があると同時に経済成長の要因でもある」と述べています。発展途上国での調査などを踏まえて、十分な教育や医療を受けられない貧しい人々への開発支援が、国や地域の全体の発展にもたらす影響を示したのです。教育と健康を取り戻した人々が、活躍の舞台を広げていけば、これまで生かされることのなかった発想が発揮され、新しい創造の源泉となります。それは社会の安定と繁栄につながり、内戦や政治の腐敗、さらにはテロリストの温床化を防ぐことにもなります。そうしたことの恩恵は、一国や周辺地域にとどまらず、グローバルに広がることは言うまでもありません。